[PCAT]: PC/AT と PC/AT 互換機の歴史
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PC/AT の特徴
PC/AT(IBM Personal Computer/Advanced Technology, モデル5170) は IBM 社が開発した
PC です。
現在のパーソナルコンピュータ (Personal Computer, PC) の原型は、PC/AT が大本のアーキテクチャとなって引き継がれています。PC
の「種の起源」と言って問題ないでしょう。
PC/AT の特徴としては以下の通り。
- オープン・アーキテクチャ
当時、IBM 社は多くのサードパーティを引き込むために PC/AT の回路図や BIOS
のソースコードを公開していました。これらのリソースは、多くの開発者が内部の動作を知ることが出来、ソフトウェア/ハードウェア開発を容易にしました。現在では殆ど絶版状態ですが
BIOS のソースコードや回路図が、PC 関連の書籍でも販売されていました。
- 既製品の結晶
PC/AT を構成している IC は、他社の既製品が殆どでした。既製品で構成することにより少しでもコストを抑えることを狙ったものと考えられています。セカンドソースも手に入りやすい
IC なので安定した供給も考えてのことでしょう。
- ISA bus (Industry Standard Architecture, AT バス)
ISA bus は 16-bit に対応した bus です。PC では PCI bus に置き換わるまで長く使用されていました。ISA
bus は bus を共有するための処理を持っておらず、殆ど直結の状態で CPU と接続します。
- MS-DOS (PC DOS)
標準の OS として Microsoft 社に開発を委託した PC DOS を採用しています。後の
MS-DOS に当たります。当時、全ての権利を発注元 (IBM 社)に渡すのが一般的でしたが
Microsoft 社は PC DOS に関しての権利とソースを受け渡さなかったと聞いています。これが後の
Microsoft 社と互換機ベンダーの繁栄に繋がります。
PC/AT 互換機の台頭
PC/AT 互換機は、PC/AT アーキテクチャと互換性を持った互換製品です。
PC/AT 互換機の流れについては以下の通り。
- アウトソーシングに依存した組み合わせ
PC は「Hardware」+「BIOS」+「OS」で構築されています。その中でも Hardware
の殆どは他社の半導体を使用しており、セカンドソースも大量に出回っていることもあって安価で入手することが可能です。IBM
社の知的財産を利用することなく組み立てられることより、互換機を製造するための部品を入手することは容易でした。
- BIOS(Basic Input/Output System) の再開発
BIOS は、PC を起動するためのハードウェア初期化ルーチンや共通サービス(ソフトウェア割り込み)等が組み込まれているソフトウェアです。このソフトウェアが無いと
PC を起動することすら出来ません。IBM 社は、互換機ベンダーに対して BIOS
の提供を行っていなかったので、互換機ベンダーは、公開されている BIOS の
Source を元にクリーンルーム方式による開発を行うことを選択しました。
後の互換機ベンダーの繁栄により、BIOS を専用に扱うベンダー(AMI, AWARD, Phoenix,...)が立ち上がる
ことになります。
<[news] リバースエンジニアリング関連>
- 別売り OS
PC で標準に付属していた OS である PC DOS は、Microsoft 社を通じで購入することが出来ました。互換機ベンダーは、MS-DOS
を動作させることで「PC/AT 互換」を強調することが出来ました。
- COMPAQ の台頭
COMPAQ 社(現HP社)は、互換機を製造することで飛躍した会社の一つです。後に
BIOS を巡って IBM 社と争うことになりますが、結局「公開されている Interface
情報を元に一切、IBM 社の知的財産(BIOS の Source)を利用することなく開発した(クリーンルーム方式)」という主張が通っています。私の記憶に間違いが無ければ
COMPAQ は「COMPAtibility and Quality」の略だったはずです。バリバリの互換機ベンダーです。
[IBM PCからPC互換機へ 1. 互換機PCベンダの誕生(@IT)]
- MCA (Micro Channel Architecture) の失敗
PC/AT の繁栄の後に IBM 社は、ISA bus の欠点を改良した新たな 32-bit bus、MCA
bus を開発しました。IBM 社は、PC/AT 互換機との差をつけるため、MCA bus を使用するに当たって高額なライセンス料を請求しました。結局、技術的には優れていたものの互換機ベンダーも、カードを開発するベンダーも
MCA を採用することはなく、市場で日の目を浴びることはありませんでした。
後に、Intel 社が中心となって開発された PCI bus が登場します。多くの面で
MCA のアーキテクチャを意識した作りになっていますが、Intel 社は PCI を「オープン・アーキテクチャ」として広く仕様を公開しています。このことより互換機ベンダーは
PCI を広くサポートすることになります。
IBM 社の市場への主導権が弱くなった現れでしょう。
- "100% PC/AT 互換機"?
DOS/Windows 3.1 時代によく聞かれた言葉です。この頃は i486〜Pentium 全盛期で、PC/AT
の原型すら感じられない状況でした。何を持って「100%」互換というのか未だに納得が出来ていないのですが、この文言が必要だった理由として、特に互換性を省いた
PC が横行していた時期があったからではないかと考えています。
例えば PC Game にとって、VGA BIOS は動作を左右する重要なプログラムだったのですが、PC
メーカーによってはライセンス料をケチってか特定の機能を組み込まずに出荷していた経緯があります。そういう場合のクレーム避けのためにこの言葉が生まれたのではないかと思っています。
#A20 の実装とかも含まれるのかな、、、
#「100% PC/AT 互換機」と言っておいてほんまもんの PC/AT で動かないのは如何なものよ?
後に、新たな標準規格として Microsoft, Intel 社が合同で PC99 なるデザインガイドを作成したこともありました。今となってはかなり昔の話かもしれません。
[PC DESIGN GUIDE の archive.org による cache]
PC の歴史は「オープンアーキテクチャ」と「リバースエンジニアリング」そして
Microsoft 社の「知的財産の保護」辺りがキーポイントでしょうか。
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- [http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0412/10/news072.html]
ITmedia の記事「IBM PCの歴史を振り返る」。IBM の PC 部門の売渡を受けた記事。
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