個別銘柄:スタンレー電気(6923) †
スタンレー電気は、自動車用照明というコモディティ(汎用品)を開発している自動車部品メーカーです。高付加価値の高い自動車用ランプとLED事業という成長エンジンを持っているのが強みと考えています。
売上げの 2/3 を自動車用照明に依存しています。自動車用照明を他に扱っている銘柄としては小糸製作所、市光工業があります。会社四季報ではこの3社を「自動車用照明の御三家」と位置付けていました。
LED銘柄としての比較も興味深いのですが、今回は自動車用照明銘柄として比較します。
準備 †
- 対象会社の決算書(最新の期と1期前)
- 日経株:6923 スタンレー電気 (H20決算)
ホンダ向け3割。2/3が自動車用照明で1/3がLED関連の電子部品。LEDの使用率の高さからパチンコ関連銘柄として取り上げられることも。日亜化学よりLED特許関連のライセンスを結んでいる。LED事業としては日亜化学(非上場)、シチズンHD(7762)に次ぐ生産量。
- 同業他社(2社以上)の決算書
- 日経株:7276 小糸製作所 (H20決算)
自動車用照明首位。トヨタ向け5割。自動車照明専業。
- 日経株:7244 市光工業 (H19決算)
自動車用照明の御三家。日産向け4割。自動車照明専業。
利益の質を図る †
- 会計発生高 = (当期純利益+特別損失-特別利益)-営業キャッシュフロー*1
自動車部品関連企業の場合、極端なキャッシュの減少は見られず会計上での操作は行われていそうな雰囲気はしません。予想ですが、販売先の大手自動車メーカーの生産計画が正確に行われていて在庫に悩まされることが少なく、また大手自動車メーカーとの信用を重んじるため会計上の操作が行われにくい環境が出来ているのかもしれません。
- スタンレー電気(H20):-19032 = (29732+2163-1160) - 49767
- 小糸製作所(H20):-24641 = (15581+347-47) - 40522
- 市光工業(H19): -5344 = (-900+8946-4673) - 8717
- 総資産経常利益率(ROA) = 経常利益/総資産*2
- スタンレー電気:14.7(H20)←13.5(H19)←12.2(H18)
業種分析 (p91) †
- 今後どのくらい成長するか?
日本の需要の横ばい、北米の需要低下は前期と同様と思われる。アジアの中でも特に中国の需要は目覚しく、今後も増えていく可能性が高い。自動車販売台数に連動するが、安定した高利益率と設備投資により他社より高い利益が得られる可能性が高いと考えている。売上高は3%程度の向上を見ているが、他社の見込みも同様のようだ。利益率改善による増収を期待したい。
- 規制産業か?
規制産業ではないが新規参入はそれほど楽ではないと考える。自動車部品の厳しい安全基準、自動車メーカーへの安定した納入実績辺りのクリアが難しいのではないか。
- 規模の経済が働くか?
規模の経済性は働いている。売上の伸びと販管費の伸びを比べると販管費の伸びが低い。
- ライバルにない強みを持っているか?
高付加価値製品による高収益が期待できる。LEDは省エネ性が注目されており、技術的にも改善の余地がある分野とされており、更なる成長が期待できる。
- 強みはどのくらい参入障壁になるか?
LEDは様々な特許で守られており新規参入は難しい。
表紙 (p118) †
- 会計処理方法の変更はないか
法人税法の改正による減価償却が変更になっている。影響は軽微。
- 営業キャッシュフローはコンスタントに伸びているか
伸びている。
- 投資キャッシュフローは営業キャッシュフローの範囲内か
範囲内。
- 営業キャッシュフローは営業利益の60〜120%に収まっているか?*3
収まっている。107% (= 49767/46563)。
- ROA(総資産経常利益率)は伸びているか*4
素晴らしい伸び。
- 売上高、営業利益、経常利益はバランスよく伸びているか*5
素晴らしい伸び。
経営成績および財務状態 (p136) †
- 自社にとって都合の悪いことにも言及しているか
言及している。
- 増収増益を自慢していないか
していない。胡散臭さは感じられない。
- 新規事業を計画しているか。しているとすれば、それは既存事業のノウハウを活かせる事業か*6
していない。
貸借対照表の「資産の部」(p147) †
- 売掛金・受取手形の額がふくらんでいないか
膨らんでいない。
- 棚卸資産の額がふくらんでいないか
膨らんでいない。
- 有形固定資産の額はいくらか、償却方法は定額法か定率法か
定率法。
- のれん代の額は大きくないか、償却期間は何年か
償却期間は5年定額法。早い。
- 繰越資産という項目があるか。あるとしたらどのくらいの額か
無い。
貸借対照表の「負債の部」 (p166) †
- 引当金や前受収益などが少なすぎないか
同業他社と比べると経年で引当金を積極的に積む作業を行っていないようだ。若干の心配要素かもしれない。
- 社債、とくに転換社債を発行していないか
社債は発行されていない。長期社債が満期に近づいたようで短期社債にカウントされていた。
貸借対照表の「純資産の部」(p171) †
- 利益剰余金は資本金・資本余剰金とくらべて小さすぎないか
利益余剰金145168に対し、資本金+資本余剰金は60340(=30514+29826)。素晴らしい伸びを示している。
- 純資産の部の大半を評価差額金が占めていないか
評価差額金は些細。
- 新株予約権が多額に発行されていないか
発行されていない。
- 少数株主持分が過大でないか
負債純資産全体では3.4%。小糸製作所は8.0%、市光工業は2.0%。過大ではないと判断。
損益計算書 (p177) †
- 営業利益は同業他社にくらべて図抜けて高くないか
売上高営業利益率は13.1%。小糸製作所は6.2%。ずば抜けて高いと判断。ただしこれはコモディティ以外での収益が影響していると思われるので問題とは考えていない。
- 特別利益・特別損失の額と項目数は多すぎないか
多過ぎではない。売上高に対する特別利益は0.3%、特別損失は0.6%。
- 法人税は40%前後になっているか
31.0% (=14823/47893)。少な過ぎやしないか?
キャッシュフロー計算書 (p186) †
- 営業キャッシュフローは売上高や営業利益に照らして適切か
適切。
- 投資キャッシュフローを自社への投資に使っているか
問題なし。殆どが有形固定資産に宛がっている。
- 財務キャッシュフローはプラスかマイナスか
マイナス。大きな変化は自社株買い。
連結財務諸表作成の基本となる重要な事項 (p195) †
- 減価償却は定額法と定率法のどちらを採用しているか
定率法。
- 無形固定資産(とくに連結調整勘定やのれん代)は何年償却か
定額法。のれん償却は5年間均等償却。
注記事項(p200) †
- 担保、偶発債務、買った会社の内容、後発事象など、気にかかる記述はないか
無い。