セクター:太陽電池/太陽光発電 †
太陽電池/太陽光発電は、光から電気に変換する装置です。電池とありますが、電気を貯めることは出来ません。
特徴としては以下の通り。
- 期待される次世代エネルギー
京都議定書の採決により、化石燃料からの脱却が検討されています。多くの先行技術の中でも太陽光発電は、既に産業として発達しており歴史が長く普及率が高い産業と言えます。小規模で発電することも出来るので、独立して存在している照明機器、標識、時計等、ニッチな分野にも応用出来ます。
- 日本が先行している技術
太陽電池を出荷している会社の殆どは日本の会社です。太陽電池は日本唯一のエネルギー輸出産業と言って良いんじゃないでしょうか。太陽電池への投資額も群を抜いています。しかも他の産業と比べ、利益率が格段に良いです。
- EUが主な出荷先
普及率は国内よりEUの方が高いです。高い普及率なのは、各国の政府の積極的な取組みで、ドイツやスペインでは普及させるために政府が4〜6倍ほど高く発電した電気を買い上げているのが原因のようです。一種の投資感覚なのでしょうか。理由がアレでも最終的な結果が良くなれ御の字ということなのでしょう。小さな政府では難しそうです。
- 慢性的なシリコン不足
2000年のITバブルによりシリコンの取引価格が急落し、製造メーカーが設備投資を躊躇ったため、現在のシリコン不足を招いたらしい。価格が急騰した現在でも、設備投資には 2〜3 年掛かるのでシリコン不足は今でも続いています。'07年の決算を見る限り、どこの企業もシリコン不足で下方修正を余儀なくされています。需要に対して原料が追いついてこないというのが現状のようです。惜しいですね。
- 脱シリコンへ
今後もシリコンの供給不足が懸念されており、なるべくシリコンを使用しない製法で発電効率の良い方法が検討されています。太陽電池の分野に新規参入するホンダは、シリコンではなく CIGS 化合物による太陽電池の製造に着手しています。
ただし今の所、技術的に確立しているシリコンに代わるまでには時間が掛かりそうです。
- 寿命は約20年程度
今の技術ではシリコン系の太陽電池の寿命は大体20年が目処のようです。期間が長い気もしますが買い換え需要が無いわけではないようです。普及が広がれば太陽電池の再利用も検討する必要が出てくるかもしれませんね。
- 発電コスト高
現在 40円/kW。'10年には 23円/kW、'30年には火力・原子力と同じく 7円/kW を目標とするとの事。確かに 40円/kW だと、現状、補助金がないと折り合わないですね。
- エネルギーペイバックタイム (Energy Payback Time, EPT)
EPT は、発電装置を製造する過程で必要としたエネルギーを取り戻すための期間を指します。この期間が長いとクリーンなエネルギーを生み出すために消費されるエネルギーが多く掛かってしまい、結果的にクリーンエネルギーとして判断されなくなります。従来、太陽電池のEPTは10年程度と考えられており、結果的にクリーンエネルギーではないのではないかと言われていました。
しかし、近年の製造技術向上により太陽電池のEPTは最長でも2年程度であるという結果が報道されています。日経新聞の記事「進化する太陽電池――温暖化抑制くっきり」(07.07.24)によると、産業技術総合研究所太陽光発電研究センターの近藤道雄所長の研究によると従来のEPTは試算が古く装置が大規模であったためコストが多く掛かっていたと指摘しています*1。ホンダの非シリコン薄膜太陽電池に至っては 11ヶ月程度との試算もあります。
- 太陽電池バブルの可能性
記事では、米国、中国、韓国等の新規参入組の生産量の急増、太陽電池の製造ラインの買付けによる大量生産、欧州の太陽電池推進政策の見直し等の影響より太陽電池バブルを懸念しています。
関連情報 †
用語 †
特集記事 †
セクター †
製品 †
多結晶・単結晶シリコン型 †
現在の主力で全体の 8 割を占める。長年に渡って技術的に確立しており最もエネルギー効率の良い太陽電池。長年、太陽電池用シリコンが不足しており、原料不足によって需要を賄いきれない状況が今でも続いている。
アモルファス型 †
準主力候補。原料となるシリコンはかなり少なく、薄型で柔軟性に富んでいる。製造段階で多くの電力を消費すること、多結晶と比べると変換効率が良くない事が今後の課題となっている。
化合物型 †
次世代太陽電池候補。シリコンを使わない製造方法で、製造コストが安価。発電効率の向上は今後の課題。製品としては、まだ出回っていないので評価はこれから。半導体と係わりの低い業種からの参入が目立つのが特徴。
製造 †
- オーナンバ (太陽電池向けの部品製造)
- アルバック (太陽電池製造装置)
- 日本マイクロニクス
- 日本電子材料
販売 †
会社名 | 株価 | wikipedia | コメント |
伊藤忠商事 | Y!株:8001 | wikipedia:伊藤忠商事 | 太陽電池部品の調達・営業。07.06.13付けで米BP社より太陽光発電事業会社のBPソーラーを譲り受け、家庭向け太陽光発電システムの卸販売事業に参入。 |
- 三菱商事:三菱電機製
- 住友商事:シャープ製(欧州向け)
- 三晃金属工業:屋根
素材(単結晶・多結晶シリコン、等方性黒鉛) †
- 半導体向けと太陽電池向けのシリコンの違い
半導体向けの場合、シリコン純度がイレブンナイン(99.999999999%)の純度を要求していますが、太陽電池向けの場合、シックスナイン(99.9999%)の純度*3で十分とされています。半導体向けのシリコンは高度な技術を要求しており新規参入は難しいとされています。太陽電池向けのシリコンは、半導体向けより低い純度で事足りるので比較的、参入のしやすい分野のようです。シリコン価格が半導体向けより安く設定されているのも理解できます。
- 株/セクター/シリコンウェハー?
半導体向けのシリコンセクター。信越化学工業とSUMCOの独壇場となっています。
- 世界の競合相手
Solar Silicon Conference ショート速報[太陽電池用シリコン] *4を参考にしました。
- 特集:徳山製造所の『ちょこっと知っとこ!』:生産量No.1 (トクヤマ)
多結晶シリコンの年間生産量 5200トンで国内1位、世界2位。
- www.nikkei.co.jp/news/kakaku/20070426d1j2501826.html (NIKKEI NET, 07.04.26)
日経の記事「多結晶シリコンの国内大口価格、3年連続で上昇」。2007年度の国内大口需要家向けの多結晶シリコンの価格が決定したとのこと。
- 半導体向け:平均 80〜85ドル/kg、前年度比 15〜20% の値上げ
- 太陽電池向け:平均60〜65ドル/kg、前年度比 15% 前後の値上げ
News †
- シャープ、池に浮かぶ太陽電池・世界最大級、出力200キロワット (NIKKEI NET, 07.07.22)
- 【決算】初の売上高3兆円超え,シャープの2006年度決算は4年連続で過去最高を更新 (Tech-On!, 07.04.25)
富山工場でのシリコン生産の立ち上げに支障が生じ、1300t/年を予定していたのが 600t/年に留まる。'07年後半に立ち上げを目指し、'08年以後には伸びる計画との事。利益率の高さは相変わらずだ。
- ニュースリリース - シリコン原料確保と世界4極生産の増強計画 (京セラ, 07.04.18)
京セラが太陽電池増産計画を発表,2010年度には約3倍の500MWへ (Tech-On!)
- カネカが変換効率12%の薄膜太陽電池を開発,子会社は薄膜太陽電池の生産を年産70MWへ増強 (Tech-On!, 07.04.04)
- 大日本印刷,印刷技術による変換効率7%の有機太陽電池を開発 (Tech-On!, 07.03.30)
- UMCが2008年に薄膜Si太陽電池を生産へ,アルバックから製造ラインを一括購入 (Tech-On!, 07.03.24)
- 住友チタニウム,多結晶Siの生産能力を1400トン/年へ増強(Tech-On!, 07.02.26)
- シャープ,太陽電池モジュールの欧州での生産を年間220MWに (Tech-On!, 07.02.02)
- 太陽電池用Si製造に向けて,チッソらが「日本ソーラーシリコン」を設立 (Tech-On!, 06.12.27)
- 太陽電池向け多結晶Si原料を冶金法で製造──JFEスチールが実機プラントの建設を開始 (Tech-On!, 06.07.26)
- 三洋電機が太陽電池事業3倍計画を発表,セル変換効率を22%に,多結晶HITも発売へ (Tech-On!, 06.06.21)
- 三菱電機,欧州市場向けの太陽電池用パワー・コンディショナを開発へ (Tech-On!, 06.04.21)
- シャープが信頼性を高めた太陽電池を発売,耐用期間は35年に (Tech-On!, 06.04.13)
- 多結晶Si原料の供給不足と価格高騰を打破,集光型球状Si太陽電池を事業化 (Tech-On!, 05.12.18)
フジプレアム。
- ホンダが2007年に効率12%の薄膜太陽電池の量産開始 (Tech-On!, 05.12.09)
ホンダが Cu-In-Ga-Se(CIGS)化合物による太陽電池の検討しているとの事。Siより技術の進歩が期待できるとの見通しらしい。