運用報告書 †
運用報告書は、販売会社を通じて受益者に対して配布しなければならない資料です。
運用報告書は、決算日を目安に作成する資料で、期中の運用方法や運用結果や運用費用や今後の運用予定等、投資信託を判断する上で非常に重要な情報が詰まっています。情報公開の進んでいる運用会社では、積極的に運用報告書を公開している場合があります。
ただし、残念ながら運用報告書は販売会社を通じて受益者に配布されるものと定められており、受益者ではない投資家には公開する必要性は無いようです。仮に受益者であったとしても決算日を迎えないと運用報告書を配布する必要性が無いようです。以前、マネックス証券(販売会社)に運用中の投資信託に対しての運用報告書の電子書類の開示を求めたのですが、決算日後ということで断られた経緯があります。運用報告書を開示する運用会社は、積極的に投資家を守る努力をしていると考えてよいかも知れません。
運用報告書の内容 †
1万口(元本10,000円)当たりの費用の詳細 (重要度:★★★) †
期中に掛かった費用について記載されています。
- (a) 信託報酬 (=期中の平均基準価額×信託報酬率)
- (b) 売買手数料 (=期中の売買委託手数料/期中の平均受益権口数)
- (c) 保管費用等 (=期中の保管費用等/期中の平均受益権口数)
- (d) その他の諸経費
ここで重要なのは信託報酬*1よりも、売買手数料に注目したいです。売買手数料は株や債券などの資産に対しての売買に必要となる費用のことです。この売買コストも信託報酬と同じく純資産から毎回差し引かれています。
積極的に株式売買を行う方針で運用している投資信託の場合、売買コストが無視できない場合があります。おおよそですが日本株の売買高比率が 2.0 の場合、全体の 0.1% 程度の費用を必要とするようです。更に売買比率が高まると 0.3-0.5% 程度の費用が必要となります。これに信託報酬が加わるのですから相当厳しい運用が続くことになります。
長期運用者の為に 0.3% 程度の信託財産留保額を徴収するのは理に適っていると考えて良さそうです。
株式売買金額の平均組入株式時価総額に対する割合 (重要度:★★★) †
期中に売買した資産の割合が記載されています。
- (a) 期中の株式売買金額
- (b) 期中の平均組入株式時価総額
- (c) 売買高比率 (=期中の株式売買金額(a)/期中の平均組入株式時価総額(b) )
特に売買高比率は資産の売買状況を知る上で重要な情報です。売買高比率が高ければ、資産の売買を積極的に行ったと言えます。
どの程度の売買高比率が最適かというのは一概に言えませんが、この値が高い場合、売買を積極的に行ったことでチャンスとリスクが増えるということを頭に入れておく必要があるかもしれません。
特徴は以下の通り。
- 売買コストの負担率
売買高比率が高い場合、資産の売買が積極的に行われたことを示します。資産の売買には売買に対するコストが掛かります。このコストは信託報酬と同じく純資産から差し引かれ、運用実績に反映されます。
- 運用の仕方によって売買高比率は異なる
インデックス型投資信託の場合、積極的に売買を行う場面が少ないため売買高比率は低めです(大体 0.3 程度)。アクティブ型投資信託の場合、ファンドマネージャの運用方針によって大きく差が付きます。例えば「バイ・アンド・フォールド運用」で有名なさわかみファンドの場合、'05/08 現在で「0.22」とインデックス型以下の売買高比率を誇ります。逆に三菱UFJ 日本株アクティブ・ファンドの場合、'05/11 の時点で「5.40」。
投資信託の運用方法でかなり差が付くものだと理解した方が良いでしょう。
- 大量の購入・解約によっても値が高くなる
このような場合は一時的な値であることが多いので、継続性は少ないと考えます。
新しく投資信託を新設した場合は、立ち上げに大量の資産を必要とするので、売買高比率が高くなる場合があります。
- 売買回転率
売買回転率は「売買回転率=売却・購入のうち少ないほうの金額/組入総額」で求めます。一般的に売却・購入は同じ程度発生していると考えて問題無いはずなので「売買回転率=売買高比率/2」でおおよその値を求めることができます。
売買回転率が 1.0(=売買高比率 が 2.0) の場合、組入れ銘柄が 1 回転(総入れ替え)したことの基準になります。
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資産、負債、元本および基準価額の状況 (重要度:★) †
基準価額の算出方法について記述があります。