個別銘柄: †
スター精密は特機事業(小型プリンタ)、コンポーネント事業(携帯向け部品)、工作機械事業、精密部品事業(時計部品等)の4つの事業がある。その中で突出しているのが工作機械で売上高6割、経常利益8割を占める。よって、この銘柄は工作機械が主体の事業だと位置付ける。スター精密の工作機械事業は主に欧州が販売の主体(5割)である。森精機とオークマを選択したのは、この2銘柄は欧州への販売主体が高いことより選択した。
準備 †
- 対象会社の決算書(最新の期と1期前)
- 同業他社(2社以上)の決算書
利益の質を図る †
- 会計発生高 = (当期純利益+特別損失-特別利益)-営業キャッシュフロー*1
問題なし。
- スター精密:-1075 = (8080+1047-257) - 10666
- オークマ:3498 = (15692+587-1103) - 11678
- 森精機:-1987 = (16194+5415-101) - 23495
- 総資産経常利益率(ROA) = 経常利益/総資産*2
- スター精密:18.7(H20.2) ← 15.2(H19.2) ← 13.2(H18.2)
- オークマ:13.5(H19.3) ← 11.5(H18.3)
- 森精機:14.9(H19.3) ← 10.7(H18.3)
業種分析 (p91) †
- 今後どのくらい成長するか?
今期の成長は期待できない。米国、日本は設備投資が少なくなる傾向にあるようだ。欧州、アジアは今の所、積極的に投資を続けている。必要としている産業は「電気・精密機械・自動車」。
- 規制産業か?
有。工作機械は、精密な精度を要求するため高い技術力と長期のサポートを必要とする。新規参入は難しいと考える。
- 規模の経済が働くか?
若干働く。ただし受注生産であることより、回転率は高いとはいえない。
- ライバルにない強みを持っているか?
特に見当たらない。ただし固定客が多そうなのでシェアが奪われるスピードは速くないはず。工作機械事業自体は、日本以外の企業は殆どライバルにならない程、競合が少ないようだ。
- 強みはどのくらい参入障壁になるか?
新規参入の障壁にはなるが大きなアドバンテージとはいえない。
表紙 (p118) †
- 会計処理方法の変更はないか
有。ただし大きな影響はないと思われる。
- 営業キャッシュフローはコンスタントに伸びているか
伸びている。H20は若干頭打ち。
- 投資キャッシュフローは営業キャッシュフローの範囲内か
範囲内。工作機械主体の企業としては珍しく安定成長を目指しているようだ。ただし投資先の半分は有価証券への投資であることに注意が必要。
- 営業キャッシュフローは営業利益の60〜120%に収まっているか?*3
72%。収まっているが製造業の割には少ないようだ。覇気が足りない。
- ROA(総資産経常利益率)は伸びているか*4
素晴らしい伸び。
- 売上高、営業利益、経常利益はバランスよく伸びているか*5
バランスはピカイチ。正直、製造業とは思えないほど。
経営成績および財務状態 (p136) †
- 自社にとって都合の悪いことにも言及しているか
言及している。数値まで正確に表記されている所を見ると、随所にこの企業の誠実さが表れている。
- 増収増益を自慢していないか
していない。むしろ減益の理由の方が詳しく記載されているほど。
- 新規事業を計画しているか。しているとすれば、それは既存事業のノウハウを活かせる事業か*6
新規事業は計画していない。大型プリンタ事業からの撤退を表明している。事業規模からしてみて撤退は悪くない経営判断だと思われる。
貸借対照表の「資産の部」(p147) †
- 売掛金・受取手形の額がふくらんでいないか
受取手形および売掛金(15242→18307)は、増加している。
- 棚卸資産の額がふくらんでいないか
増加している(12529→15436)。
- 有形固定資産の額はいくらか、償却方法は定額法か定率法か
17727(20.5%)。定率法。
- のれん代の額は大きくないか、償却期間は何年か
154。10年均等償却。
- 繰越資産という項目があるか。あるとしたらどのくらいの額か
無い。
貸借対照表の「負債の部」 (p166) †
- 引当金や前受収益などが少なすぎないか
今回、引当金が多く積まれている。何かあるのかもしれない。
- 社債、とくに転換社債を発行していないか
発行していない。
貸借対照表の「純資産の部」(p171) †
- 利益剰余金は資本金・資本余剰金とくらべて小さすぎないか
資本金(12721)、資本余剰金(13961)、利益余剰金(39327)。1.47倍。もう少し積極的に膨らましてもいいように感じるが、どうだろうか。
- 純資産の部の大半を評価差額金が占めていないか
0.6%程度。
- 少数株主持分が過大でないか
過大ではない(0.9%程度)。
損益計算書 (p177) †
- 営業利益は同業他社にくらべて図抜けて高くないか
工作機械だけ見るとかなり高い収益性(25%)を持っているのだが、全体を通してみるとマイルドな高収益(19.8%)。ずば抜けていると言えばずば抜けているが、この業種はこういうものなんじゃないかと。
- 特別利益・特別損失の額と項目数は多すぎないか
些細なレベル。特別利益(0.4%)、特別損失(1.4%)。
- 法人税は40%前後になっているか
41%(= 5977/14381)。素晴らしい。
キャッシュフロー計算書 (p186) †
- 営業キャッシュフローは売上高や営業利益に照らして適切か
適切。
- 投資キャッシュフローを自社への投資に使っているか
半分が有価証券への投資に使われている。製造業としては如何なものかと。新規事業展開のアイディアが少ないのかもしれない。その点では、高い配当性向(37.2%)は納得できるところかもしれない。悪く見れば、成熟産業から衰退産業への入り口へ差し掛かっているようにも見える。
- 財務キャッシュフローはプラスかマイナスか
マイナスだが大半は配当金の支払いに宛がわれている。
連結財務諸表作成の基本となる重要な事項 (p195) †
- 減価償却は定額法と定率法のどちらを採用しているか
有形固定資産は定率法。無形固定資産(のれん)は定額法。
- 無形固定資産(とくに連結調整勘定やのれん代)は何年償却か
のれんは10年償却。早い方だろう。
注記事項(p200) †
- 担保、偶発債務、買った会社の内容、後発事象など、気にかかる記述はないか
大型プリンタ事業の撤退に関する減損損失が発生している。