個別銘柄:東海カーボン (5301) †
H18決算、H19中間決算を見る限り、成長性に文句なし。海外比率は4割程度でアジア(中国、韓国)と欧州が占めている。米国はかなり少ない。
ただし他社と比べ、たな卸資産と売上債権がかなり高い水準にあるので随時、確認する必要がある。投資期にあるので営業キャッシュフローが厳しくなっているのは毎回確認する必要がありそうだ。
後、需要が落ち込むとかなりの勢いで利益が落ち込む分野っぽいのでそれなりの心の準備が必要かもしれない。今のところ、需要が落ち込んでいる兆しは見えない。
準備 †
- 対象会社の決算書(最新の期と1期前)
- 同業他社(2社以上)の決算書
利益の質を図る †
- 会計発生高 = (当期純利益+特別損失-特別利益)-営業キャッシュフロー*1
- 5301 : 2009 = ( 7967 + 1093 - 362 ) - 6689
- 5302 : -2223 = ( 2684 + 594 - 187 ) - 5314
- 5310 : -945 = ( 4439 + 195 - 586 ) - 4993
他と比べて会計発生高が多い。
営業キャッシュフローでたな卸資産(△3995)売上債権の増加(△5991)の影響が大きいようだ。前年度より大きく増加している。他との比較や前年度との比較ではこれより半分くらいが正常な範囲。広がるようだと要注意。
H19中間決算では若干解消している(たな卸資産△477, 売上債権△3438)。多大な設備投資によるしわ寄せが、在庫という形になっているようだ。ただ他社共にしばらくは需給面での問題は無い見通しのようなので、いずれ解消されていくものではないかと思いたい。たな卸資産が多いのこの業種の特徴っぽい。何故かは分からないけど。需給の悪化が見られるようになると、利益面での悪化が早まる可能性が高い。
- 総資産経常利益率(ROA) = 経常利益/総資産*2
- 5301 : 8.8% = 14446/164061 (前年度7.4%)
- 5302 : 9.6% = 4957/51877 (前年度6.4%)
- 5310 : 13.0% = 7123/54830 (前年度11.0%)
売上げ、利益共に上向き。前期、今期共に固定資産への投資を続けているがROAに大きな変更は無く、規模拡大は今の所順調に利益に繋がっている。
業種分析 (p91) †
- 今後どのくらい成長するか?
10〜15%程度の成長が見込める産業と見ている。電炉で使用される電極が国内・海外(韓国等の新興国)で好調に推移。好調な需要により供給が追いついていない。他社カーボンメーカーも同様のようだ。
自動車産業(タイヤ)で使用されているカーボンブラックも好調のようだ。
- 規制産業か?
比較的、参入しやすい分野のようだ。最近だとイビデンが黒鉛ルツボの生産を発表している。
- 規模の経済が働くか?
働いている。
- ライバルにない強みを持っているか?
カーボン系では取り扱っている種類が豊富。規模は一番大きく、ここ数年、プラントへの投資が続いている。
- 強みはどのくらい参入障壁になるか?
プラントを整備する初期投資。技術力による障壁は検証できず。
表紙 (p118) †
- 会計処理方法の変更はないか
無。
- 営業キャッシュフローはコンスタントに伸びているか
×。6689(H18)←9719(H17)。
- 投資キャッシュフローは営業キャッシュフローの範囲内か
×。2期連続で10%程度投資キャッシュフローを超えている。施設への積極的な投資が原因。
- 営業キャッシュフローは営業利益の60〜120%に収まっているか?*3
×。45% = 6689/14800 と範囲に収まっていない。H19中期では58%(=5835/10013)と改善はしているものの依然として範囲内に収まっていない。法人税の支払いと売上債権が足を引っ張っている。意図的にそうしているのかな?
- ROA(総資産経常利益率)は伸びているか*4
○:伸びている。
- 売上高、営業利益、経常利益はバランスよく伸びているか*5
営業利益率は14.9%(H18)<-13.9%(H17)と申し分なし。
経営成績および財務状態 (p136) †
- 自社にとって都合の悪いことにも言及しているか
×:言及していない。売上債権、棚卸資産、前渡金の増加については事実のみ言及。
- 増収増益を自慢していないか
△:若干自慢気味。
- 新規事業を計画しているか。しているとすれば、それは既存事業のノウハウを活かせる事業か*6
計画していない。
- 具体的な数字が載っているか*7
気になる点は無い。
貸借対照表の「資産の部」(p147) †
- 売掛金・受取手形の額がふくらんでいないか
×:膨らんでいる(33243<-26500)。要注意。
- 棚卸資産の額がふくらんでいないか
×:膨らんでいる(24542<-19742)。要注意。
- 繰越税金資産はどのくらいあるか
?:繰延税金負債の方が繰延税金資産より大きい。節税?
- 有形固定資産の額はいくらか、償却方法は定額法か定率法か
定率法。
- のれん代の額は大きくないか、償却期間は何年か
とくに記載無し。
- 繰越資産という項目があるか。あるとしたらどのくらいの額か
特に無し。
貸借対照表の「負債の部」 (p166) †
- 引当金や前受収益などが少なすぎないか
問題なし。他社と同等程度。
- 社債、とくに転換社債を発行していないか
無利子の新株予約権付社債(84億円)。
貸借対照表の「純資産の部」(p171) †
- 利益剰余金は資本金・資本余剰金とくらべて小さすぎないか
特に問題なし。
- 純資産の部の大半を評価差額金が占めていないか
若干、有価証券による儲けが多いようだが問題は無いだろう。
- 新株予約権が多額に発行されていないか
特に問題なし。
- 少数株主持分が過大でないか
特に問題なし。
損益計算書 (p177) †
- 営業利益は同業他社にくらべて図抜けて高くないか
同程度。
- 特別利益・特別損失の額と項目数は多すぎないか
△:特別利益(3)、特別損失(4)。
- 法人税は40%前後になっているか
特に問題なし。
キャッシュフロー計算書 (p186) †
- 営業キャッシュフローは売上高や営業利益に照らして適切か
たな卸資産、売上債権の増加がキャッシュフローの足を引っ張っている。
- 投資キャッシュフローを自社への投資に使っているか
かなり攻撃的に使っている。
- 財務キャッシュフローはプラスかマイナスか
マイナス。
連結財務諸表作成の基本となる重要な事項 (p195) †
- 当年度に変更項目はあるか
無。
- 減価償却は定額法と定率法のどちらを採用しているか
定率法。
- 無形固定資産(とくに連結調整勘定やのれん代)は何年償却か
20年以内。
注記事項(p200) †
- 担保、偶発債務、買った会社の内容、後発事象など、気にかかる記述はないか
特に無し。